めまいと奴隷調教

 すべてのサディストがそうだとは限らないものの、相手が求めているのが「あなたという個人」ではなく、「願望充足が可能なマゾヒスト」であるケースも、世の中には少なからずありそうだ。

 恋愛でいうところの、恋人とセフレの違いに近いものかもしれない。ただ、セフレとは違って、記号としてのマゾヒストが愛奴に変わる可能性もないとは言えない。その意味でも、恋人と奴隷は異質のものだと感じる。

 先日、ヒッチコックの「めまい」をDVDで借りて観た。ストーリー展開はサスペンスドラマの原点ともいえるものだし、多くの映画で使われている「めまいショット」は、ここから始まったらしい。

 作品の中で主人公は、想いを寄せていた人妻の死後、とてもよく似た女性を街で見かける。そして、彼女に近づいた彼は、服装からヘアスタイル、果ては髪の色まで件の人妻と同じにさせようとするのだ。

 その女性にとっては、主人公の愛する誰かに似せられることは明らかな苦痛だ。なのに、過去の負い目と彼を失う恐れから、その要求を拒めない。彼の望むがままに、自分を変えられてゆく。


 

 この「めまい」は性的な要素もなく、SM的な支配とは無関係な話だ。しかし、サディストの持つ「自分の理想とする奴隷を作り上げる」という姿勢に、とても近いものを感じた。

 従う側がそうされることに心から納得していればよいが、主が本人の良さを無視して型に嵌めようとしすぎると、奴隷はありのままの自分を受け入れてもらえない悲哀を感じるかもしれない。

 加えて言えば、いわゆる「インナースレイブ」の具現化ならまだしも、調教によって過去の奴隷と同じように作り変えたいというスタンスは、お互いにとって不幸な結末につながりやすい気がする。

「めまいと奴隷調教 」 is writed by マスターOB@SM主従関係の相克.
category
支配と服従
genre
アダルト
theme
支配と服従